こんにちは。文章を書くのが好きな一般人、うつがや(@utugaya)です。
僕は趣味で小説を書いている傍らよく読書もするのですが、今まで読んできた本の中でも特にビビッと来たSF小説、貴志祐介「新世界より」を今回は紹介したいと思います。
普段SF小説を読んでいると難解な内容や難しい文体で中々手の進まない僕ですが、本書は一風変わった「和風SF」という日本人になじみの深い設定で描かれていて、とても読みやすく僕も引き込まれてあっという間に読み終えてしまいました。
古来より続く日本の独特な「伝承」に「SF」を足した異色の本作、具体的にどういうところがおすすめなのか、詳しく書いていこうと思います!
- 和×SFの異色の組み合わせ
- 日本人の持つ「集団心理」という思考
- 隠された村の悪しき”伝統”とは
新世界よりについて
あらすじ
1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄(しめなわ)で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力(念動力)」を得るに至った人類が手にした平和。念動力(サイコキネシス)の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた……隠された先史文明の一端を知るまでは。
講談社文庫
書籍情報
著者 | 貴志祐介 |
定価 | 880円+税 |
ページ数 | 488ページ |
初版年月日 | 2011年1月14日 |
ISBN | 978-4-06-276853-5 |
おすすめポイント
この段落では何度も読み返して感じた作品の魅力について、三つに分けて詳しく紹介していきます。
和×SFの相性の良さ
本書の要ともなる「和」とSFの掛け合わせ。これが非常に相性良く、物語の深みや文体の雰囲気をグッと高めているように感じました。
「新世界より」には大きく分けて二つのテーマがあり、それは「後悔」と「災害」です。前者は定番とも言える、「能力の暴走」問題。やはり持つ物と持たざる者では格差が出来上がってしまいます。それも、はっきりと地層を分けるほどに。
それは持つ者同士でも同じで、誰かが一度暴れてしまえば取り返しは付かないことになる。新世界の「災害」とは、自然災害では無くもしかしたら人的災害のことを指すのかも知れません。
そんな危うい世界を維持しているのが、後述する日本人の持っている「集団心理」という思考なのです。
日本人の特有の思考「集団心理」はSFにとって厄介かも
近年取り上げられた日本発のSF映画に「シンゴジラ」があると思います。
あれも決断の遅い日本政府を皮肉を込めて描いていて、そういうところに「日本らしさ」を感じる名作映画なのですが、「新世界より」もそんな日本らしさにプラスして「登場する単位が”村”である」という点が絡んできます。
「村」と聞いて思い浮かべる「村八分」という単語。
もし村人全員が能力者の場合、”異端者”はいったいどう扱われるのでしょうか。
周りが目を光らせている中でもし自分の子供がその”異端者”になったのなら。
「シンゴジラ」が現代の中央集権的な描き方をしているのなら、「新世界より」はもっと身近な、「生活の場」を中心として描かれています。
“もし自分がこの世界で能力の異端者に生まれてしまったら”
そう想像するだけでも村特有の思考とSFの相性は抜群な事が分かっていただけると思います。
他書にはない「新世界より」の良いところ
「新世界より」は上・中・下巻の三冊二別れており、総ページ数を数えると1000ページは優に超えてきます。
この「長編である」と言う点にも良さがあり、本作は主人公の幼少期・思春期・青年期と「村に生まれて、村の秘密を知って、それで今度は村を背負う側になる」という一連の成長が描かれているんです。
しかも本来創作では省かれることの多い「性との目覚め」や「好きとは何か」、「他人とは」に至るまでしっかりと”思春期”を通過して主人公たちは大人になっていきます。
そんな「成長の生々しさ」がより没入感を促進して、まるであの街で育ったような感覚にさせてくる。
そんなところにもこの作品の凄さが滲み出ています。
アニメ版「新世界より」について

「新世界より」にはアニメ版もあるのですが、これもまた凄い。
制作は「すべてがFになる」や「僕だけがいない街」を手掛けたA-1 Pictures担当し、長時間観ても飽きない作画になっています。
映像化されることで浮き上がるこの作品独特のジメジメ感は本当に素晴らしく、実のところ僕もアニメから入ったのですが一発で魅了されました。
「成長の生々しさ」も映像では儚くも美しさを輝かせており、アニメ版も一見の価値有りです。
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講談社
表紙にもありますが、「超問題作」です。
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講談社文庫
今から11年ほど前に嵐の大野智さん主役で放映されていた月9ドラマ「鍵のかかった部屋」の原作です!
最近も2020年に特別編が放送されるなどまだまだ知名度の高いドラマですが、原作も無論凄いです。
映像化される事でどうしても薄れてしまう「読者としての視点」が原作では生き、トリックへの見方を大きく変えていきます。
貴志先生特有の繊細なトリックだからこそ文章でも味わってほしい、そんな一作です。
まとめ
と言うことでいかがだったでしょうか!
勢いで書き殴ってしまいましたが、「新世界より」はそれほど語り尽くすことがないお気に入りの一冊です。
日本に古来からある「伝統」にフィーチャーした作品は少ないですが、その奥深さと設定の持つ独自性は類を見ない物があるなと本書を読んでいてとても感じます。
和×SF、それに日本人の持つ独特の「集団心理」。それが掛け合った名作を今回は紹介しました。
気に入って頂けたら是非手に取って頂けると嬉しいです。
最後まで読んで下さりありがとうございました!