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Book review

「20代で得た知見」を読んで。ほろ苦い言葉は自分の心に染み込み静かに爆発の時を待つ”劇薬”だ。

Book review

こんにちは、文章を書くのが好きな一般人、うつがや(@utugaya)です。

きっと、この記事を読みに来てくれた人は少なからず「20代で得た知見」について良い感触をお持ちでしょう。

ですが、僕ははっきりとここで断言します。この本は自己啓発本の皮を被った”劇薬”です。

F先生の文体で述べられる「人生の知見」は心の奥底に染み込んで、格好の”爆発の瞬間”を狙っています。

その言葉たちが一気に花開く時、あなたは耐えられますか?

という事で今回は「20代で得た知見」について、どこが良かったのか、どう飲み込むことが正解なのかについて詳しく書いていきたいと思います!

おすすめポイント
  • 人生の苦味は読んでいて苦しくなる
  • 華々とした生活の数々はコンプレックスを増幅させるだけ
  • 劇薬口に苦し。飲み込んだ後の”処方箋”の使い方

20代で得た知見について

あらすじ

一人の人間の人生は、出会った言葉でも、預金額で決まるとも、恋愛だの結婚で決まるとも思えない。
ある夜友人が電話で語ってくれた台詞、または恋人がふとした瞬間吐き捨てた台詞、バーで隣の男が語ってくれた一夜限りの話、なんの救いもない都会の景色、あるいは、夜道で雨のように己の全身を貫いた、言葉にもならない気づき。そういったものによって人生は決定されたように思うのです。
私はその断片を「二十代で得た知見」と名づけることにしました。

「眠れぬ一人の夜を支えてくれる」「二十代を生きる上で大変参考になった」
「もっと早く知りたかった」といった反響多数。

著書累計30万部。F、待望の最新刊。

KADOKAWA

書籍情報

著者F
定価1,300円+税
ページ数288ページ
初版年月日2020年9月19日
ISBN978-4-04-604799-1

おすすめポイント

人生の苦味は読んでいて苦しくなる

まず、なんと言っても読んでいて”苦しくなる”という点です。

本書に語られる人生についての知見はどれも「寂しさ」や「孤独感」、「死」についてでありそれらが著者の実体験から語られます。

「失恋」や「失敗」を要所要所美化しながら描かれるものの、どれも重く苦しい”現実である”という点が読んでいる人々を苦しめます。

30代に入る頃だからこその失敗談は等身大の読者に苦味を与え、「これが人生である」と太鼓判を押すようです。

きっとこの本を読んだ先に待っているのは共感でも慰めでもなく痛烈に投げられる”自分を生きろ”という言葉だと感じました。

本書に縋りたい、少しでも人生の助けになってほしい、そんな甘い考えを持っている人が読むべき本ではないな、と思います。

華々とした生活の数々はコンプレックスを増幅させるだけ

本書を括るのは本を読むものとして申し訳ないと感じるのですが、ジャンルとしては「Twitter文学」的側面が大きいです。

港区や新宿、タワマンなどを中心に語られるこのジャンルはあくまで創作として楽しむ分には面白いと感じますが、”人生の啓発本”として読む分には単にコンプレックスを増幅させるだけです。

また、この場面設定が”人生の知見”を大幅に美化させており、「こんなの自分には出来ない」とターゲットを絞ることに繋がってしまっているのではと考えます。

キラキラ輝く世界に広がる焦げ跡のような苦味は等身大で受け取るには重く、苦しく、余計に悩みの底なし沼に堕ちて行ってしまうように感じました。

劇薬口に苦し。飲み込んだ後の”処方箋”の使い方

さて、自分的に本書の要素について解説して来た訳ですが、本書の大きな意味合いはまさにこの「苦味を飲み込むこと」にあると考えます。

華々しい世界で語られる「20代で得た知見」は”自由でキラキラした20代の終わり”を意味しており、そこで得た知見はかけがえのない唯一無二の経験であることも確かです。

それを飲み込んで、はたまた経験していない層には擬似経験として飲み込ませ、心の奥底に溜めておく。
それはいつか不意に自分の中で爆発する瞬間が来るのだろう、と僕は読んでいて感じました。

恋愛観や人生観についても痛烈であればあるほど染み込む量も大きくなり、また染み込んだ量が大きいほど人生の苦しみは自分の中に広がっていくのです。

飲み込んでしまったが最後、一度でも人生に対し「20代で得た知見」を使ってしまったのなら。

この本は一気に自分の中で暴れ出し、自分を破壊し心を「文学的領域」(エモさ)に閉じ込めてしまうことでしょう。

この本はいわば”時限式爆弾”です。

誰もが経験する、はたまた似たような体験をする事だからこそ感傷的な答えを先に提示しておき、後の人生で答え合わせをさせる。

すぐには効かない”劇薬”だからこそ僕はこの本を愛するのです。

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一度は目にしたことのある文体で描かれる「成功の闇」はまるで深淵を覗いているようで、読んでいてゾクゾクします。

現代版怖い話か、それとも遅効性の劇薬か。是非お手に取って真相を知っていただけると幸いです。

まとめ

と言うことでいかがだったでしょうか?

辛いことがあった日に、風呂上がりにハーブティーを飲みながら食べるブラックチョコレートのような苦味と優しさが込められている本書。

1日1ページでも良い。たまに本棚から引っ張り出しては目を通し、「良いな」と感じる程度が本書の正しい使い方なのかも知れません。

気に入って頂けたら是非手に取って頂けると嬉しいです。
最後まで読んで下さりありがとうございました!

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