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Book review

「天使は炭酸しか飲まない」を読んで。炭酸の痛みは青春の痛みに似ている気がする

Book review

こんにちは。文章を書くのが好きな一般人、うつがや(@utugaya)です。

皆さん最近ラブコメ、摂取していますか?

人間の必要要素として上げられる「たんぱく質・炭水化物・ビタミン」の他に第4の要素として上げられるのが甘酸っぱい青春ラブコメです。

体育館裏に呼び出して告白する夕暮れ時、自分の隣に女の子が歩いているという幸福感、たまに感じるセンチメンタルクライシス。

人生において中々感じざるを得なかった要素を接種できる青春ラブコメですが、最近電撃文庫からアオハルの塊のような青春ラブコメが発売されました。

それが「天使は炭酸しか飲まない」です。

恋にトラウマを持つ主人公が悩めるヒロインのために一石を投じる作品なのですが、これがまた最高の青春ラブコメを提供してくれます。

本作のなんと言ってもな特色は、その読後感。

炭酸水を飲んだ後のようなチクチク喉を指す痛みはあの頃の胸の痛みのようで、読んでいてとても苦しく、そして爽快な気持ちにさせてくれます。

そんな「天使は炭酸しか飲まない」を今回は「三ツ矢サイダーのような読後感・一風変わった登場人物の関係性・青春ラブコメの価値」の三つに分けてレビューしていきたいと思います!

是非最後まで読んでくれたら幸いです。

それではいってみましょー!

あらすじ

記憶と恋がしゅわりと弾ける、すこし不思議な青春ストーリー。

恋に悩みはつきものだ。 気持ちを伝える勇気がほしい。意中の相手の好きな人が知りたい。誰かに悩みを聞いてほしい。背中を押してほしい。 そんなやつらの気持ちが、俺には痛いほどわかる。 忘れられない過去があるから。そして、彼らを救える「ちから」があるから──。 だから、俺、明石伊緒は“天使” となった。 「やっと見つけたわ、久世高の天使」 恋多き乙女、柚月湊の異常な惚れ癖を直すため、天使は少女の頬に触れる。記憶と恋がしゅわりと弾ける、すこし不思議な青春物語。

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書籍情報

著者丸深まろやか(@maromi_maroyaka
定価660円+税
ページ数328ページ
初版年月日2022年1月10日
ISBN978-4-04-913946-4

おすすめポイント

喉を刺す文体と三ツ矢サイダーの読後感。甘さは控えめです。

ライトノベルにある程度目を通したことのある方なら理解してくれると思うのですが、ラノベのラブコメジャンルは大きく2つに分類が出来ます。

一つ目は「学校一の美少女とイチャイチャあまあまな日常生活を送る系ラブコメ」。

もう一つは「主人公ひねくれ毒吐きネチネチ突っ掛かり系ラブコメ」です。

前者は文字通り「学校一可愛いヒロインと冴えない俺があるきっかけを境にイチャイチャし始める」系の作品です。

読んだ後は「早く付き合えよ!!!!!」と思わず叫びたくなるほどに主人公が羨ましく、何故自分がこの人生を送れなかったのか思わず悔やんでしまいます。

一方、ラノベと言ったらコレ!な「主人公ひねくれ」系ラブコメ。

代表作には「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」や「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」などがあると思います。

このジャンルの良さと言ったら、何といっても読後、喉奥から登ってくるような気色悪さ。

主人公がひねくれまくっていて、「俺が傷つけばそれでいい」とか読んでいて恥ずかしくなるようなことを平気で言っちゃいます。

読んでいて思わず「痛々しい〜〜!!」と目に入れるのも辛いほどですが、そんな”痛々しさ”は我々が「高校生」というまだまだ未熟な時期に絶対一度は通った道であり、「そこからいかにして成長していくか」はまるで青春を追体験しているかのような気にさせてくれるのです。

一方本作、「天使は炭酸しか飲まない」はそのどれとも違った雰囲気を醸し出しています。

本作の主人公、「明石伊緒」が原動力としている感情は、「苦悩への粘り」でもなく、「誰かの支えてくれる力」でもなく、「諦め」なんです。

心のどこかで色々なものに諦めを感じているからこその「こうなってほしくはない」という反発力。

思春期特有の自意識過剰な感情からやってくるものではなく、”全てを諦めてしまったような脱力感”に読んでいて、時折とてつもなく心が苦しくなります。

それはまるで、三ツ矢サイダーを飲んだ後のような、喉をズキズキと突き刺すような痛み。

青い空の下で諦めてしまった今の自分と”諦めたくなかった”と言う感情が交差するのです。

これを「ライトノベル」という媒体でやってのけた本作は、まさに唯一無二な青春ラブコメだと思います。

そこに諦めがあるからこその。主人公とヒロインの一風変わった関係性が魅力的です。

本作の特徴として、「主人公とヒロインの関係性が少し変わっている」というものがあります。

例えば、同じ部活で出会ったり。

幼馴染で昔から一緒にいた仲だったり、ひょんなきっかけで顔馴染みになったり。

青春ラブコメの人間関係を構築している要素として、「そこに体を無茶にでも動かせるアツい何かがある」だと思います。

幼馴染であるならば、大切な相手を守りたい。

同じ部活であるならば、目標を達成したい。

ですが本作「天使は炭酸しか飲まない」はそうではないんです。

この2人を繋ぐ関係値は「依頼人」と「相談相手」でしかないんです。

「久世高の天使」として恋愛相談に乗っていた主人公。そこに現われたヒロイン。

たまたま同じ学校に通っていて、ヒロインは校内で有名だった主人公に恋愛相談を持ちかけ、物語は始まりを告げます。

この浅い関係こそが「明石伊尾」の「諦め」がいかに強いかを表しており、三ツ矢サイダーのような「爽やかやながら口に残る甘さ」を表現しているのです。

2人して事件を解決しているようで、その実ヒロイン→主人公、主人公←ヒロインの一方通行に過ぎず、無茶にでも体を動かしてしまうような何かはない。

つかず離れず、ただ、主人公とヒロインは”恋愛相談”という枠組み内だけで関係を結んでいます。

そして、浅かろうと主人公の「ヒロインは諦めて欲しくない」と言う自己犠牲にも似た感情が爆発するとき、物語は動き出すのです。

他のラブコメにはない特色が、本作を「心響く作品」へと導いているのではないかと思います。

人間が生きていく上で定期的に青春ラブコメを接種する必要があります。これは国も言ってます。

皆さん最近「青春ラブコメ」読みました?

僕は中々読めていないのですが、久しぶりに手にとってみて、気がつきました。

定期的なラブコメ接種が人生に於いては必要だわ」と。

インターネットが発達したことによって、他人との距離はより近く、24時間ずっと一緒に居られるようになりました。

ですがたまに、「あー、青春ラブコメみたいな青春してー」ってなる瞬間がやってきませんか?

下校時刻から家に帰るまで、薄暗くなった住宅街を美少女の歩幅に合わせて一緒に歩く。

「誰かを想うため」に一生懸命で、時に困難の壁が立ちはだかったときには全てを投げ捨ててでも想う相手を助けに行く。

そんな「青春不足」、とても体に悪いです。余命を削っています。

空いた時間にでも時折青春ラブコメを接種し、心に青春の甘酸っぱさを溜めることは”あの頃に帰る”と言う意味でもとても大切な事なんだと思います。

好きな人にドギマギして話しかけられなかったり、好きな人の髪型の変化に気がついたり、デートに誘えたり。

今の時代ではどれも容易で簡単な事かも知れませんが、ほんのちょっぴりで良いんです。

「狭い教室で同い年の子が集められて、その中でほんの少しだけ『いいな』って思える人がいたなー」って。

この現代社会を生き抜くのに疲れた時は是非、青春ラブコメを読んでください。

いつも身近にある「青春ラブコメ」作品は、きっとあなたの人生に、薄らと甘酸っぱい色を付けてくれますよ。

もし本書が気に入ったら

他の「青春ラブコメ」作品

  • やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

「青春ラブコメ」と言ったらまさにこれ!

渡航先生の名著「やはり俺の青春ラブコメは間違っている」です。

このラノベは「主人公ひねくれ毒吐きネチネチ突っ掛かり系ラブコメ」のまさに元祖とも言える作品で、読んだ後は主人公の選択にどこか切なく、どこか若さ故の悲しみを感じます。

それでも前を向き、無理矢理にでも”人間”と相対していく姿は過去の苦しくもどこか儚かった思春期を思い出させてくれる事でしょう。

何より、雪ノ下雪乃先輩、由比ヶ浜結衣さん、ダブルヒロインのどちらとゴールするのか!!

未読の方はアニメもおすすめ!

久しぶりに読み返すとどこか懐かしく、またあの頃のアツさを思い返してくれる作品です!!

  • 青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない

“青春”という言葉は、本作を読まなければ語ってはいけない!

鴨志田一先生の名作青春ラブコメ「青ブタ」です。

本作の特徴は「思春期特有の悩みが”怪異”として現れるところ」にあります。

例えば、「私の姿を見て欲しい」と悩めばその姿は透明に。

西尾維新の「物語シリーズ」を彷彿とさせるような設定に、ラノベの青春ラブコメまっしぐらな「何もわからないけれど、体だけは動いている」主人公。

とにかく未読の人は一巻だけで良いので読んで欲しい!

青ブタの持つ独特でしっとり濡れた世界観にハマる事間違いなしです!

  • 弱キャラ友崎くん

最近の青春ラブコメで売れている作品といったらまさにこの作品。

屋久ユウキ先生著「弱キャラ友崎くん」です!

この作品は「ひねくれた主人公」のちょっと先。

とあるゲームがきっかけで出会ったクラスの一軍女子と陰キャ主人公。

最初は一軍女子のキャピキャピ感を怖がっていたはずの主人公も少しずつ容姿を整え始めたり、会話の練習をしたりして周りとなじみ始めます。

そして恋愛の影も……そろり……そろり……。

今の現状に嫌気が指している人必読!

“自分もこうなれるかもしれない”を一番感じられる、一歩前に踏み出す勇気をもらえる作品です!

まとめ

ということでいかがだったでしょうか?

今回は青春ラブコメの新世代「天使は炭酸しか飲まない」をご紹介しました。

オタクならば一度は感じた事のある”あの夏”現象。

突然の通り雨に制服が濡れる帰り道。

思春期の時でしか感じられなかったあの景色に、一度足を止めて戻ってみませんか?

気に入って頂けたら是非手に取って頂けると嬉しいです。

最後まで読んで下さりありがとうございました!

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