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Book review

「魔女と猟犬」を読んで。ライトノベルに現れた”本格派ファンタジー”の魔女

Book review

こんにちは。文章を書くのが好きな一般人、うつがや(@utugaya)です。

僕は普段、ラブコメ要素のある日常系ラノベをよく読むのですが、皆さんはどういったジャンルを読むことが多いですか?

近年では「なろう」と表されることの多いファンタジー系や、「たんもし」と言った本格ミステリーなど、ライトノベルにも数多くのジャンルが増えてきています。

今回はそんな多彩なジャンルの中で作品数最大の「ファンタジー」について切り込んでいきたいと思います。

ライトノベルでファンタジーというと、想像されるのは「異世界転生系」が多いと思われます。

現世に恨みのある主人公がひょんなことから死亡し、神を名乗るよく分からない生物から何らかの特殊な能力を授けられ異世界へと飛ばされる。

そうして始まる第二の人生的なファンタジーに、見覚えの多い方もいらっしゃると思います。

でも正直、そう言った展開飽きませんか?

もうどの作品でもテンプレートのように繰り返された設定に、どこかで読んだ覚えのある主人公とヒロインの姿。

今回紹介するのは、そんなファンタジーの闇を切り裂く本格派ファンタジー「猟犬と魔女」です。

この作品、ライトノベルなのに設定の重厚感やストーリーの展開などが他ジャンル顔負けなほど本格で、まるで新たなハリーポッターを読んでいるような、そんな気にさせてくれます。

ラノベファンタジーの異端児とも言っていいこの作品、今回は「ラノベの域を超えた重厚な世界観設定の話」「ブックデザインが凄い話」「『続刊が読みたくなる感』がとてつもない話」の三つに分けて詳しく解説しておこうと思いますので、最後までお付き合いいただければ幸いです!

おすすめポイント
  • まるでロードオブザリングのような世界観は「本当にこれがラノベなの!?」って驚愕する
  • イラストも秀逸だが、なんといってもデザインが凄い。え? これ本当にラノベですか?
  • なんといっても「続刊が読みたくなる感」。残り少ないページ数にご用心です

あらすじ

使命は、厄災の魔女たちを味方につけること。

農園と鍛冶で栄える小国キャンパスフェロー。そこに暮らす人々は貧しくとも心豊かに暮らしていた。だが、その小国に侵略の戦火が迫りつつあった。闘争と魔法の王国アメリアは、女王アメリアの指揮のもと、多くの魔術師を独占し超常の力をもって領土を拡大し続けていたのだ。
このままではキャンパスフェローは滅びてしまう。そこで領主のバド・グレースは起死回生の奇策に出る。それは、大陸全土に散らばる凶悪な魔女たちを集め、王国アメリアに対抗するというものだった――。
時を同じくして、キャンパスフェローの隣国である騎士の国レーヴェにて“鏡の魔女”が拘束されたとの報せが入る。レーヴェの王を誘惑し、王妃の座に就こうとしていた魔女が婚礼の日にその正体を暴かれ、参列者たちを虐殺したのだという。
領主のバドは “鏡の魔女”の身柄を譲り受けるべく、従者たちを引き連れてレーヴェへと旅立つ。その一行の中に、ロロはいた。通称“黒犬”と呼ばれる彼は、ありとあらゆる殺しの技術を叩き込まれ、キャンパスフェローの暗殺者として育てられた少年だった……。
まだ誰も見たことのない、壮大かつ凶悪なダークファンタジーがその幕を開ける。

小学館ガガガ文庫

書籍情報

著者カミツキレイニー(@kamitsuki_rainy)
定価690円+税
ページ数376ページ
初版年月日2020年10月26日
ISBN978-4-09-451864-1 

おすすめポイント

この段落では僕が読んで「これは是非おすすめしたい!」と思った点について詳しく紹介していきます。

まるでロードオブザリングのような世界観は「本当にこれがラノベなの!?」って驚愕する

世間的にもっともゆうめいなファンタジー作品として名が上がるのが「ロードオブザリング」

この作品の作者である「J・R・R・トールキン」は本作品執筆のため独自言語の開発や詳細な地形地図まで作り上げたことが知られています。

ファンタジーの大切な点はまさに「いかに世界観を作りこむか」にあると思います。

本作の「魔女と猟犬」はライトノベルの枠を飛び出し、そんな「本格ファンタジー」を展開させた唯一無二の作品です。

読み始めて数分、その設定の作りこまれた世界に読者は取り込まれることとなります。

アンデルセンのお伽話に登場する人物のようなどこか暖かく、どこか儚いキャラクターが動き回り、じわじわと「この世界についての詳細な情報」を読者の脳に叩き込んでくる訳です。

その感覚はまるで異国を自分の目で見て旅をしているような、そんな感覚。

本書の中頃まで進めば、もう「ライトノベルを読んでいる」と言う感覚は完全に消し去ります。

「狼と香辛料」でもなければ、「キノの旅」でもない。どちらかといえばハリーポッターやナルニア国物語に近い読み応えは、「本当にこれがラノベなの!?」ときっとあなたも驚愕することでしょう。

イラストも秀逸だが、それ以上にデザインが凄い。正直この作品は紙で手に取って欲しい……

「魔女と猟犬」のイラストを担当されている方は、Twitterで一度は見たことある方も多いと思います、LAM先生です。

この方のビビットな配色や、それに合わせて作られたどこか棘のあるキャラクターデザインも「ラノベではない本格ファンタジー」を引き立てていますが、なんといってもすごいのがブックデザイン。

本書のデザインは、このLAM先生とタッグを組んだデザイナーのカトウさんからなる「雷雷公社」という所が担当しており、文字通りLAM先生のイラストを何十倍も盛り上げるデザインです。

表紙に大きく映された「魔女」に合わせトゲトゲしていたり、反対にふわふわしていたりと各巻に合わせてデザインされていますが、これがイラストだけでなく、本作の魅力を何倍も何倍も倍増させているのです。

よくあるラノベ的なポップチックデザインとは違い、本書の魅力を底上げするため、普段お目にはかからないようなデザインを施されています。

例えば、章の区切り。

余韻を最大限活かすため扉絵ならぬ扉デザインを装飾されていて、次のページをめくるのが楽しくて楽しくて仕方がありません。

その姿は「映画ハリーポッターと秘密の部屋」に登場する、蛇の紋章がついた扉の様。

あの丸い扉が蛇の首が引っ込むことで開いていく「次に何くるの!?」というドキドキ感が紙媒体である本書にもあり、本当に読んでいて楽しい一冊です。

正直デジタル派の僕ですが、この作品はデザインを楽しむ意味でも紙で手に取って欲しい…!

なんだあのワクワク感!?! ここまで「本を読んでいて楽しい」と感じる作品、正直中々ないです

なんといっても「続刊が読みたくなる感」。残り少ないページ数にご用心です

そして最後にお伝えするのが「続刊が読みたくなる感」。マジでこれが凄い!!!!!

できる限りネタバレに注意して紹介すると、作品終盤、活躍する登場人物たちがドンドン苦戦を強いられたり、むしろ形勢逆転し悪役を一気に追い詰めたりするのですが…!? えっ!?!?

カミツキレイニー先生の頭の中どうなってるの…?????

「はっ!!! ここで終わらすの!?!?」

と言ったハラハラの最大値で終わりを迎えたり、反対に大団円で終わったはずなのに次の敵が見えてきたりしてもう本当に、感情のジェットコースターです。

この作品、本当に新刊が楽しみになります。

LAM先生の表紙イラストが発表されるたびにドキドキし、そのデザインの高さにワクワクし、そして「本格派ファンタジー」の内容へ…

どこをとっても待ち遠しい。こんなの読者泣かせだよ!!!

もし本書が気に入ったら

他の「ファンタジー」作品

  • 貴志祐介「新世界より」

こちらの作品、ファンタジー作品ではあるのですが、設定が「和風×SF」という一見不思議な組み合わせになっております。

「和風にSF要素まであって、それでファンタジーってどう言うこと!?!?」とお思いのあなた。これが意外にマッチするんですよ!!!

強いていえば、和風カレーです。

カレーに出汁?合わんやん。

いやいや、バカにすることなかれ。これが意外に合うんですよ。出汁の効いたスパイシーさが残るカレーに、ツヤッツヤの白飯。二つを合わせてかき込めば、それはもう最高です。

気になった方は下記の記事にて「新世界より」の詳細な解説をしておりますので是非一度読んでみてください!

ちなみに今夜はカレーでした。

  • 宮部みゆき「ここはボツコニアン」

かの宮部みゆき先生といえば「模倣犯」や「長い長い殺人」で有名ですが、今回紹介する本書は完全に「宮部先生が趣味で書いた」と言われている一冊になります。

宮部先生のファンタジー、それだけで面白そうですが、内容も一級品。

レベルの高いサクサク読める文体で綴られた冒険ものは他のなろう系作品にはない「文字の奥から感じられる温かさ」や「キャラから感じられる人間感」があり、とても同系列の作品とは思えません。

有名作家が書いたファンタジーというだけで面白いのに、その上緻密でほんわかしていて温かい。

量産型ファンタジーに飽きた全ての読者へ送る、最高峰の一冊。これを読めば、きっとあなたもボツコニアンに行きたくなることでしょう。

  • 有象利路「賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求 ~愛弟子サヨナのわくわく冒険ランド~」

あなたは有象利路先生を知っていますか?

知らないなら知らなくていいので、とりあえず読んでください。

「タイトルにシコルだのジーライフだの下ネタっぽいこと入ってるじゃないか!」って?

知らなくていいです。読んでください。

本作品は下ネタと時事ネタとカスネタがミキサーにかけられて偶然の産物で生まれた作品です。

故に内容は下ネタ一本!

変な「ハーレム」とかじゃない、ド直球ストレート180kmの下ネタがビュンビュン飛んできます。

それができるのも全ては「ファンタジー」だから。

この作品、読んだら脳が焼き切れます。後、下ネタについて詳しくなれます。

読まない理由が見つからない!史上最高の下ネタファンタジー作品はここです!!!!!!!

まとめ

ということでいかがだったでしょうか?

何かと謙遜しがちなジャンルに「SF」「本格ファンタジー」「警察小説」の三つを僕は挙げますが、その中でも本作だけは無理をしてでも読んでほしいほどに、その価値観が変わるような名作でした。

現在もシリーズは続き、2023年8月現在は4巻まで刊行されています!

これからもますます展開が楽しみな本作。
気に入って頂けたら是非手に取って頂けると嬉しいです。

最後まで読んで下さりありがとうございました!

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