こんにちは。文章を書くのが好きな一般人、うつがや(@utugaya)です。
固定ページのプロフィールにも書いたのですが、僕は中学生の頃弓道部に所属していました。
入部したきっかけは単に「カッコよさそう!」と思ったのと実は幼少期から剣道をやっていて、「『道』の付くスポーツならなんとなく行けるんじゃね?」という甘い考えがあったからです。
そんな生半可な気持ちで選択した3年間は中々にハードで、結局途中で退部してしまいました。
部活に対し後悔と邪念が渦巻く中、出会ったのが全学生に教えたい一冊「響け!ユーフォニアム」シリーズです。
吹奏楽部が舞台に巻き起こるヒューマンドラマには、感動や勇気をもらえるだけでなく、もっともっと深いところから「音楽はこうも素晴らしい」と問いかけてくるものがあります。
今回はそんな「響け!ユーフォニアム」について読んでいて感じたおすすめポイントと、さらには「どうして僕は『吹奏楽部に入れば良かった』と後悔したのか」について、詳しく書いていこうと思います!
響け!ユーフォニアムについて
あらすじ
北宇治高校吹奏楽部は、過去には全国大会に出場したこともある強豪校だったが、顧問がかわってからは関西大会にも進めていない。しかし、新しく赴任した滝昇の厳しい指導のもと、生徒たちは着実に力をつけていった。実際はソロを巡っての争いや、勉強を優先し部活を辞める生徒も出てくるなど、波瀾万丈の毎日。そんななか、いよいよコンクールの日がやってくる――。少女たちの心の成長を描いた青春エンタメ小説。
本気になるって、いいよね!授業だけでは得られない、吹部女子たちの心の成長を描いた感動ストーリー!すべての音が、今、ひとつになる――。
宝島社
書籍情報
著者 | 武田綾乃(@ayanotakeda) |
価格 | 723 |
ページ数 | 319ページ |
初版年月日 | 2013年12月 |
ISBN | 978-4-8002-1747-9 |
おすすめポイント
この段落では僕が読んで「これは是非おすすめしたい!」と思った点について詳しく紹介していきます。
青春と人間関係。何より黄前ちゃんの考え方に胸が抉られる
「青春」と聞いて、皆さんは何を想像するのでしょうか?
あの白いセーラー服を着ては帰り道友達と寄り道する日々。
学校生活・部活動・休日。同性や異性の友達と朝から晩まで遊んでは「思い出とその時は呼べない思い出」を作っていく。
今となっては華々しい学生生活の醍醐味が、”人間関係にある”、そう思います。
先輩と言い争った部活動。友達と喧嘩する日常。不意に異性が気になっていく、そんな思春期。
いわば”対人関係の格闘”と呼ぶこの時期に、主人公の黄前久美子は生きています。
彼女の所属する吹奏楽部ではいつも沢山の人間関係による問題が巻き起こります。
そんな時、彼女がいつも胸に抱いているのは”私”との戦いです。
「私に何が出来るのだろう」「私だったらどうするのだろう」「私って、この先どうするのだろう」
そんな”私本意の考え方”が胸を抉ってきます。
他人を理解する時、他人の気持ちになって考える。その先で、「私はどうするべきか」を考え出す。
こんなにも純粋で、他人想いで、何よりも”自分本位”に立ち回れる事こそ、青春の醍醐味ではないでしょうか?
よりライトな“音楽小説”は、音楽の楽しさをダイレクトに伝えてくる
本作のジャンルを問われる時、いつも悩みます。
宝島社から文庫として出版されているからには扱い的には”純文学”になると思うのですが、内容はどちらかと言うと”ライトノベル”寄り。
会話文多めで登場人物同士のやり取りが物語を回していきます。
そんな”どっち付かず”な作風こそ、「音楽小説の楽しさ」をダイレクトに伝えてくるのです。
登場人物に入り込みやすい”ライトノベル要素”が音楽の雰囲気に読者を取り込み、ひたむきな”純文学さ”が演奏することの楽しさを増幅させてくる。
純文学の堅苦しさとライトノベルの軽薄さを取り持つ本作だからこそ、心の底から「音楽って楽しいんだ」とダイレクトに伝えてくるのでしょう。
どうしても心の奥底から「吹奏楽部に入れば良かった」と思ってしまう理由
さて、ここからは小説の話を抜け青春の話をします。
僕自身、とても青春についてコンプレックスがあります。
それは部活を途中でやめたからなど様々な要因が渦巻いています。
そんな中、こんなにも純粋で、ひたむきで、どんな問題にも真摯に向き合う”高校吹奏楽部”という存在に出会ってしまったのなら、惹かれない人はいないでしょう。
なによりも、本作の良さは「どんなことにも真摯である」という点です。
自分は真摯に向き合っていても、それが伝わらなかったりそうではない雰囲気になってしまうのも事実。
そんな雰囲気を取り込み、一つの意識として現れてくる”音楽の存在”は、読むたびに僕の心に話しかけてきます。
「楽器を取れ」「音を鳴らせ」「存在をアピールしろ」
幻想かも知れませんが、”何かをみんなで作る”という事にここまで惹かれたのは、本作を読まなくてはなかったかも知れません。
アニメ版「響け!ユーフォニアム」について
制作はアニメ界の伝説である「CLANNAD」や「中二病でも恋がしたい!」を制作した京都アニメーションが担当しています。
アニメ版は小説版と違い、どうしても登場人物の心理描写が薄くなりがちです。
ですが、アニメ版にしかない良さももちろんあります。
それは、「音楽を実際に聴けること」です。
彼ら彼女らが演奏する姿を実際に見ることが出来、しかも音楽まで聴けてしまう。
オーケストラの迫力、主人公の緊張感、表情、全て視聴することができ、その作画は圧巻です。
2023年には新作の映画も公開されることが決定し、まだまだ広がるユーフォニアムワールド。
一見の価値は想像する以上に高い、とまだ未視聴の方に伝えたい一作です。
もし本書が気に入ったら
他の「吹奏楽部」が舞台の作品
- 初恋ソムリエ(ハルチカシリーズ)
廃部寸前の弱小吹奏楽部を立て直し、普門館を目指す高校2年生の穂村チカと上条ハルタ。吹奏楽経験者たちに起きた謎を解決し入部させることに成功していた2人だったが、音楽エリートの芹澤直子には断られ続けていた。ある時、芹澤の伯母が高校にやって来た。「初恋研究会」なる部に招待されたのだという。やがて伯母の初恋に秘められた、40年前のある事件が浮かび上がり……。(表題作より)“ハルチカ”シリーズ第2弾!
2016年にアニメ化もされた、ハルチカシリーズを飾る一冊です。
吹奏楽×ミステリーと風変わりな本作、衝撃的な展開から物語は幕を開けます。
男女の幼馴染が巻き起こすミステリーの数々、そして恋の行方はどうなるの!?
「これは面白い」と誰もが思うハルチカシリーズ、おすすめです。
他の「武田綾乃」作品
- 青い春を数えて
“青春”の表も裏もすべて抱えて、少女は大人になっていく。放送部の知咲は、本番の舞台にトラウマがある。だが、エースの有紗の様子が変で――(白線と一歩)。怒られることが怖い優等生の細谷と、滅多に学校に来ない噂の不良少女・清水。正反対の二人の逃避行の結末は(漠然と五体)。少女と大人の狭間で揺れ動く5人の高校生。瑞々しくも切実な感情を切り取った連作短編集。解説・井手上漠
NHK放送コンクールの課題原稿に選ばれた経歴を持つ本作。
ユーフォシリーズがライトノベル的側面に比重があるならば、こちらは純文学的側面に比重を置いた作品です。
違いはどこか。それは登場人物の揺れる繊細な心理描写にあります。
決していい場面ばかりではない、”青春”。
決断の連続に、変わりゆく”自分”という存在。
儚くも美しい物語は、きっとあなたの心にさざなみを立てることでしょう。
- 飛び立つ君の背を見上げる
北宇治高校三年、中川夏紀。私は今日、吹奏楽部を引退した――。『響け! ユーフォニアム』シリーズの人気キャラ・中川夏紀の視点で、傘木希美、鎧塚みぞれ、そして吉川優子をみた物語。エモさ全開の青春エンターテインメント。
ユーフォニアムシリーズから武田綾乃先生にハマり幾重の著作物を読破した僕がお勧めする最大の一冊がこれです。
ユーフォニアムシリーズに登場する同じパートの先輩、「中川夏紀」に焦点を当てた一冊なのですが、なんてったって”青春の終わり”感がエグい。
それは夏の終わりのようにやってきて、それでも人生はゆっくりと続いていきます。
高校三年生の夏。進路、友人関係。
あえて距離を置いて傍観していた主人公の青春は、どのように終わりを迎えるのか。
未読の方には是非読んでほしい、渾身の一冊です。
まとめ
この「響け!ユーフォニアム」シリーズは僕の読書遍歴の中でも最上位に位置するほど愛してやまないシリーズなのですが、本記事で書ききれない程に良さが詰まった作品です。
辛いことがあって、暴れたくなって、でも暴れたら誰かに迷惑をかけるかもしれない。そんな自制で結局は暴れられない思春期。
そんな「動力」を音に変えて、聴きゆくすべての人に届けていく。
この小説からは、そんな例えられない力をひしひしと感じます。
気に入って頂けたら是非手に取って頂けると嬉しいです。
最後まで読んで下さりありがとうございました!